- 土地家屋調査士試験の難易度を知りたい。
- どうして難しい資格と言われるのか具体的に理由を教えて。
こんな要望に答えます。
結論から言うと、土地家屋調査士試験の難易度は高いです。(合格率約9%)
ただし、戦略的に戦えば合格は可能です。
今回、土地家屋調査士試験の難易度がどのくらい高いのか。そして、合格が難しい理由を過去問を引用しながらわかりやすく解説します。
本記事を読めば、土地家屋調査士試験について全く知らない人でも具体的な難易度のイメージがつきます。
どうぞご覧ください。
土地家屋調査士の難易度は高い
土地家屋調査士試験の難易度は比較的高く、難しい資格だと言われています。
毎年、合格率は約9%で、合格者数は約400人ほど。
例えば、令和元年度の合格者数と合格率は以下の通りです。
- 受験者数:4,198人
- 合格者数:406人
- 合格率:9.68%
つまり、合格できるのは毎年10人に1人未満ということです。
難易度が高いのは具体的にどのパート?
土地家屋調査士試験で難易度が高いと言われている部分はズバリ、筆記試験「午後の部」です。
まず、土地家屋調査士の試験をざっくり説明すると以下のようになっています。
- 筆記:午前・午後に分かれる
- 午前:2時間←免除可
- 午後:2時間30分
- 口述:約15分間の面接
筆記試験の「午前の部」は条件により免除されます。
具体的には、測量士補資格などを持っている人は免除されるため、多くの受験者がまずは比較的かんたんな測量士補の資格を取得します。
また、口述試験は緊張はするものの、一般的なコミニュケーションが取れる人であれば、合格はそこまで難しくはありません。
つまり、筆記試験の「午後の部」が肝でここの難易度が高いのです。
なぜ土地家屋調査士試験は難易度が高いのか?【理由3つ】
土地家屋調査士試験の難易度が高い理由は主に3つあります。
- 足切り点数がある=毎年合格点が変わる
- 試験時間が短く時間配分が難しい
- 暗記だけでなく計算や作図がある
順番に解説します。
足切り点数がある=毎年合格点が変わる
土地家屋調査士の試験は毎年合格点が変わります。
そして、足切り点数が設定されており、それに満たない場合は不合格となります。
簡単に言ったら、定員数が決められており、毎年合格点が変動する大学受験のような感じです。
以下に記事執筆時(2020年6月13日)より過去5年間分の具体的なデータをまとめました。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 合格点 | |
---|---|---|---|---|---|
午前(満点100点中) | 午後(満点100点中) | ||||
平成27年度 | 4,568人 | 403人 | 8.82% | 70.0点以上 | 73.5点以上 |
平成28年度 | 4,506人 | 402人 | 8.92% | 70.0点以上 | 74.5点以上 |
平成29年度 | 4,600人 | 400人 | 8.69% | 72.0点以上 | 81.0点以上 |
平成30年度 | 4,380人 | 418人 | 9.54% | 72.0点以上 | 81.0点以上 |
令和元年度 | 4,198人 | 406人 | 9.68% | 70.0点以上 | 76.5点以上 |
注目してほしいのは一番右側「午後の部」の項目。(午前の部は免除というていで説明)
満点100点の筆記試験に対し、例年合格ラインは約75点以上となっています。
例えば令和元年度は合格点76.5点以上ですが、平成30・29年度にいたっては81点以上とかなり高い点数だということからも難易度の高さがうかがえます。
足切り点数について:補足
足切り点数についてですが「午後の部」の試験をさらに細かく分けると以下のようになります。
- 択一(5択)50点満点:20問(各2.5点)
- 記述 50点満点:2問(各25点)
これら2つに足切り点数が設定されており、どちらか一方でも足切り点数に届かないと不合格となってしまうのです。
過去5年分の足切り点数は以下の通りです。
年度 | 択一足切り点(満点50点中) | 記述足切り点(満点50点中) | 合格点(満点100点中) |
---|---|---|---|
平成27年度 | 32.5点(13問以上) | 30.0点 | 73.5点以上 |
平成28年度 | 30.0点(12問以上) | 31.5点 | 74.5点以上 |
平成29年度 | 37.5点(15問以上) | 36.0点 | 81.0点以上 |
平成30年度 | 35.0点(14問以上) | 33.5点 | 81.0点以上 |
令和元年度 | 32.5点(13問以上) | 33.0点 | 76.5点以上 |
択一式問題については、だいたい平均すると20問中14問以上で足切り点数に届くイメージですね。
記述式に関しては次で詳しく説明します。
暗記だけでなく計算や作図がある
土地家屋調査士試験の難易度が高い理由2つ目が、「計算や作図問題があること」があげられます。
他の資格試験では暗記問題が中心なのに対して、土地家屋調査士試験では、関数電卓や三角定規などを使って図面を手描きします。
それが、筆記試験の「記述式問題」のパートになります。
記述式問題は土地と建物でそれぞれ1問ずつ、計2問出題されます。
内容的にそこまで高度な数学知識が必要というわけではありませんが、sin(サイン)、cos(コサイン)、tan(タンジェント)の三角関数や複素数などの知識が必要になってきます。
また、図面が丁寧にひけていないなかったり、抜けている部分があると減点されてしまうなど、手先の器用さも必要です。
これが、他の資格試験と比べて難易度が高いとされる理由です。
試験時間が短く時間配分が難しい
そして土地家屋調査士の難易度が高い最後の理由としては「試験時間が短く、時間配分が難しい」というのがあげられます。
こちらも筆記試験の「午後の部」に限って言えることですが、合計2時間30分の試験時間に対し、圧倒的な分量で時間の足りなさを感じます。
なお、合格を視野に入れた理想的な時間配分は、以下の通りです。
- 択一(20問):30分(各1分30秒)
- 記述(2問):2時間(各1時間)
具体的にどのくらい素早く解く必要があるかは、実際の過去問を見ればわかります。
順番にみていきましょう。
択一(20問):30分(各1分30秒)
例えばこれは、令和元年度の択一式の第1問目です。
とてつもないボリュームではないですか?
これだけの量の文章をさっと読んで1分30秒以内で答えなければいけないのです。
しかも、これが20問。
ざっと、合計30分で解かないと次の記述式の時間がなくなるため、かなりテキパキ解く必要があります。
記述(2問):2時間(各1時間)
こちらは記述式。
同じく令和元年度の過去問の第22問目(建物)から引用します。
こちらは問題部分ですが、ページ数にして7ページ。
そして、こちらが答案用紙です。計2枚。
これを1時間を目安に解きます。
なお、第21問目の土地も同じ分量があります。
この記述式問題は先程説明したように関数電卓や三角定規を駆使してスムーズに解く力が求められます。
これら3つの理由から、土地家屋調査士試験の難易度の高さがわかると思います。
合格までに必要な勉強時間
土地家屋調査士試験に合格するために必要な勉強時間は約1,000~1,500時間と言われています。
例えば他の資格と比較すると以下の通り。
- 司法書士:約2,000~3,000時間
- 土地家屋調査士:約1,000~1,500時間
- 社会保険労務士:約800~1,000時間
- 行政書士:約500~800時間
司法書士ほどではありませんが、かなりの勉強時間が必要なことがわかるかと思います。
土地家屋調査士の難易度は結構高い:まとめ
まとめると、以下のように土地家屋調査士試験の難易度は結構高いです。
- 毎年の合格者数:約400名
- 合格率:約9%
- 勉強時間:約1,000~1,500時間
実際、合格者のほとんどは予備校などスクールに通っています。
おすすめスクールはこちらの記事「土地家屋調査士の試験突破におすすめの予備校2選」にまとめています。
ただ、しっかりと戦略を練って勉強すれば独学でも合格の可能性はあります。
スクールに行くにしても、独学で挑戦するにしても、土地家屋調査士資格の取得は長期戦になる覚悟が必要です。
具体的には、2年から3年もしくはそれ以上かかる場合もあります。
土地家屋調査士は間違いなく稼げる穴場資格ではありますが、難易度も高いため、まずはあなたの生活を犠牲にしてでもチャレンジする価値があるかどうかを考えてみてください。