はじめに断っておきます。
私は一京急ユーザーとして京急線が好きですし、応援もしています。
でも、今回の駅名変更で「新逗子駅」が「逗子・葉山駅」に変わることに少なからず疑問を覚えたため、記事にしました。
この記事では、2020年の京急駅名変更に興味を持った人に向けて、各駅の変更理由とともに「新逗子駅」を「逗子・葉山駅」に改名した京急の思惑を考察していきます。
あくまで、一個人の意見ではありますが、駅名変更の概要や背景について知ることができます。
最後までお付き合いください。
いつ、どこの駅が改名される?
京急の公式発表によると、2020年3月14日より6つの駅で駅名が変更されます。
変更されるのは「産業道路駅」、「花月園前駅」、「仲木戸駅」、「新逗子駅」、「羽田空港国内線ターミナル駅」、「羽田空港国際線ターミナル駅」の全部で6駅です。
変更前 | 変更後 | |
---|---|---|
旧駅名 | 新駅名 | 読み方 |
産業道路駅 | 大師橋駅 | だいしばし |
花月園前駅 | 花月総持寺駅 | かげつそうじじ |
仲木戸駅 | 京急東神奈川駅 | けいきゅうひがしかながわ |
新逗子駅 | 逗子・葉山駅 | ずし・はやま |
羽田空港国内線ターミナル駅 | 羽田空港第1・第2ターミナル駅 | はねだくうこうだいいち・だいにたーみなる |
羽田空港国際線ターミナル駅 | 羽田空港第3ターミナル駅 | はねだくうこうだいさんたーみなる |
私はこの新しい駅名を見てなぜか逗子・葉山駅だけ何かがひっかかりました。
その原因は駅名変更の理由を見て分かりました。
※ 羽田空港内の2駅は羽田空港第2旅客ターミナルビルにて国際線飛行機の離発着陸が開始されることが理由での改名となります。当記事ではこれを軽微な変更とし、取り上げていません。
なぜ京急の駅名が変更になるのか?
まず、「逗子・葉山駅」以外のその他3駅の変更理由を京急の公式発表をもとに見てみましょう。
産業道路駅
- 新駅名:大師橋駅(だいしばし)
- 所属路線:京急大師線
- 平均利用人数:10,523人/日(2017年度実績)
- 所属地:神奈川県川崎市川崎区大師河原2-4-25
選定理由
出典:2020年3月に4駅の駅名を変更します | ニュースリリース | 京浜急行電鉄(KEIKYU)
京浜急行大師線連続立体交差事業における駅の地下化を機に、川崎市と大田区を結ぶ架け橋で、地元シンボルのひとつでもある「大師橋」に変更し、新しい街づくりのさらなる契機とする。
と、京急は言っています。
はい。これは何の違和感もありません。私も変更理由に納得です。
京急の「産業道路駅」といえば、渋滞の起る踏切がわきにあることで有名でした。
産業道路という神奈川県東部から東京都大田区に続く片側3車線の大きな道路をぶった切る、横に長い踏切です。
これを5分に1本のペースで京急線が通過するため、踏切はそこそこ渋滞を起こす原因となっていました。
それが、2019年3月より産業道路駅が地下に潜ることで踏切は廃止となり、現在は渋滞も解消されるようになりました。
そして、これを機に多摩川にかかる「大師橋」の名前をとったのでしょう。
確かに「産業道路」という名称は、全国各地にある道路名のため分かりづらいですし、駅はちょうど大師橋の付け根に位置するため、ピッタリのネーミングといえます。
花月園前駅
- 新駅名:花月総持寺駅(かげつそうじじ)
- 所属路線:京急本線
- 平均利用人数:6,801人/日(2017年度実績)
- 所属地:神奈川県横浜市鶴見区生麦5-1-3
選定理由
出典:2020年3月に4駅の駅名を変更します | ニュースリリース | 京浜急行電鉄(KEIKYU)
「花月園」は、かつて東洋一の遊園地として、その後は競輪場として賑わいを見せたが、2010年に競輪場が閉場し、現在は新たな街づくりが計画されている。その一環として、駅から徒歩7分の場所にあり、曹洞宗大本山として全国に知られている「總持寺」を駅名に入れ、地域活性化に繋げる。※正式表記は「總持寺」であるが、駅名は通用字体の「総」を用いる。
これもいいのではないでしょうか。
昔、花月園前駅近くに花月園というかなり大きなテーマパークがありました。そして、現在はその遊園地もなくなり、都市計画により、駅から近いお寺である「總持寺」の名前をとったのでしょう。
仲木戸駅
- 新駅名:京急東神奈川駅(けいきゅうひがしかながわ)
- 所属路線:京急本線
- 平均利用人数:22,996人/日(2017年度実績)
- 所属地:神奈川県横浜市神奈川区東神奈川1-11-5
選定理由
出典:2020年3月に4駅の駅名を変更します | ニュースリリース | 京浜急行電鉄(KEIKYU)
東日本旅客鉄道(株)の東神奈川駅と隣接していながら、駅名が異なることで乗り換え可能な駅としてお客さまから十分に認知されていないことから、「京急」を冠したうえで同駅名とし、乗り間違いを防ぎつつ利便性を高める。
こちらも正当な理由だと思います。賛成です。
確かに、「仲木戸って知っている?」と聞いて「ああ、東神奈川にくっついてる駅ね。」と答えられる方はおそらく当駅を一度は利用したことがある方でしょう。
「仲木戸駅」と「JR東神奈川駅」が遊歩道で隣接しているということを知ってる人はそんなに多くない印象です。
少なからず、今回の改名で「仲木戸駅」が「京急東神奈川駅」になることでJRと京急で歩ける距離に駅があるという認識が広まることは間違いでしょう。
ところで、京急は「JR鶴見駅と京急鶴見駅」、「JR川崎駅と京急川崎駅」、「JR蒲田駅と京急蒲田駅」のようにJRに便乗して駅名を決めるのが好きなようです。
そもそも、京急本線の横浜-品川間はJRとほぼ同じ位置を並行に走っているため似た駅名になりやすいのでしょうか。
新逗子駅は「逗子・葉山駅」に変わる
そして問題の新逗子駅です。
- 新駅名:逗子・葉山駅(ずし・はやま)
- 所属路線:京急逗子線
- 平均利用人数:25,315人/日(2017年度実績)
- 所属地:神奈川県逗子市逗子5-1-6
新駅名は「逗子・葉山駅」となります。京急の選定理由は以下のようになります。
選定理由
出典:2020年3月に4駅の駅名を変更します | ニュースリリース | 京浜急行電鉄(KEIKYU)
ブランド力のある逗子と葉山を合わせた駅名に変更することで、三浦半島の更なるイメージ向上と定住人口・交流人口増により、地域活性化を図る。また、羽田空港からの直行電車の終端駅のため、行き先として駅名が表示されることにより、多くのお客さまに保養地、景勝地である葉山へのアクセスポイントでもあることを広く認知していただく。
私はここで「ん?」となりました。
葉山には駅がないはずなのになぜその命名?
前述の他の3駅が現在の状況をくんだ選定理由というのに対し、新逗子駅だけブランド力やイメージアップを望んでという、なぜか「願望」が強い気がするのです。
新逗子駅は京急逗子線の終着駅であり、確かに都内から葉山を目指すとしたら、まず新逗子駅に向かうことは確かです。
ただ、それは通過点の一つというだけであって、目的地である葉山まではバスに乗換えることがほとんどです。
現に「葉山」というバス停が葉山御用邸や葉山警察署の最寄りバス停として存在するのです。
>> リニューアル!葉山女子旅きっぷのバス路線図は4ルート覚えれば完璧
葉山といえばここを想像する人が多いのではないでしょうか。
ちなみに、「葉山」バス停留所は新逗子駅から9個目バス停でバスの乗車時間約15分、距離にして約4kmです。
これを一つの駅とするのはいささか強引ではないでしょうか。
京急は「葉山女子旅きっぷ」を流行らせたいのでは?
ここからは私の勝手な想像ですが、京急はこのような思惑があるのではないのでしょうか。
テレビCMで積極的に三浦半島を宣伝
最近、京急は積極的にテレビCMをうっています。
特に、三崎まぐろをお得に食べられる「みさきまぐろきっぷ」のアピールっぷりは目を見張るものがあります。
そして、そのようなきっぷの中に逗子・葉山をお得に旅できる「葉山女子旅きっぷ」というおトクなきっぷがあります。
>>【リニューアル】「葉山女子旅きっぷ」のおすすめルート・コース紹介
京急が目指す葉山を使ったブランド戦略
名称から見ても一目瞭然ですが、京急は葉山なんて駅は無いのに「葉山」を全面に押し出しています。
こういった事情から、「葉山」というワードは京急が目指しているブランドイメージの完成系なのではないでしょうか。
京急は葉山に駅を作らないつもりか
だとしたら、「頑張って葉山に駅を作ってよ。」というのが私の率直な意見です。
新逗子駅は利用者がそこそこ多い
あまり、電鉄事情はよくわかりませんが、「新逗子駅」は乗降人員も25,315人/日と「羽田空港国際線ターミナル駅」の26,036人/日と比べてもほぼ同人数(いずれも2017年度実績)を誇ります。
それに、それだけブランドを確立したいのであれば、線路延長して「新逗子駅」の先に「葉山駅」を作っても良いと思うのです。
それを、これだけ離れている逗子と葉山を強引に一つまとめるということは、京急は「この先、線路を延長させて葉山に駅を作ることはないよ。」と言い切っているようにも感じます。
葉山に向かうバスは年々混雑
また、京急が流行らせたい「葉山女子旅きっぷ」ですが、エリア内はバスでの移動を強いられます。
そして、エリア内は結構広く、このバス移動が何気に辛いんです。
また、葉山住民目線だと、観光で人が増えることは喜ばしいことです
ところが、生活で使用しているバスにぞくぞくと観光客が乗り込み、いつでも混んでいるというのは、正直かなり迷惑と感じるユーザーも少なくないのではないでしょうか。
そう考えると、駅がもう一つ出来たらかなり移動は楽になると思うのですが、新駅名の「逗子・葉山駅」で一つにまとめてしまった状況を見る限り、そのような計画は一切ない様ですね。
逗子・葉山駅になることを反対の住民もいる
それとも、今後、葉山に新駅ができたらまた改名するつもりなのでしょうか?
というか、そもそも「新逗子駅」も「JR逗子駅」に便乗したような駅名です。
いずれにしても葉山の地域住民も「逗子・葉山駅」という駅名にはあまり賛成ではないようですし、そのままの「新逗子駅」で良いのではないかと私は思います。