- 土地や建物の登記はいくらでできるの?
- 合筆や分筆、表題登記で価格はどのくらい変わる?
- 土地家屋調査士に依頼する費用相場が知りたい。
とお悩みですか?
実は不動産登記に関わる費用には相場が存在します。
今回は、日本土地家屋調査士会連合会が実施したアンケートをもとに、登記費用の相場について具体例を上げながらわかりやすく解説します。
本記事を参考にするだけで、不動産登記費用の相場観が自然と身につき、お得に登記を進めることができます。
どうぞ、ご覧ください。
土地建物の登記費用の相場はこう決まる
土地家屋調査士に測量や登記業務を依頼した際は以下2つの費用が必要。
- 実費
- 報酬
順に解説します。
実費
実費とは業務を遂行する上で必ずかかる費用です。
具体的には以下があげられます。
- 役所資料の閲覧費用
- 収入印紙代
- 交通費
- 境界標識の購入費
この部分は例え、あなた自身で遂行してもかかってくる費用です。
報酬
次に土地家屋調査士に支払う「報酬」です。
土地家屋調査士は弁護士や司法書士と同じように国家資格です。
例えば、弁護士に何かを相談したら「相談料」が発生しますよね。
「相談だからタダ!」とはいきません。
これと同じように、土地家屋調査士に依頼した際にも業務を代理で行ったための「報酬」がかかってきます。
大体の名目はこんな感じ。
- 調査業務
- 測量業務
- 書類作成業務
- 登記申請業務
詳しく説明すると
1.調査業務
測量や登記費用は現場の状況等ケースバイケースでかなり変わってきます。
そのため、測量に入る前にその土地についての様々な資料を取り寄せたりして、事前調査をします。
具体的には実際に現地に足を運んだり、役所に行って道路の境界図面を取り寄せたりします。
2.測量業務
実際に現地で測量します。
目的は事前調査で得た図面等の資料が現地と違っていないかを精査するためです。
また、そもそも図面がない場合は現地のブロック塀等を境界線の根拠にしたりするため、それらの位置関係を測量します。
3.書類作成業務
測量結果から誤差の確認や面積計算をします。
それをもとに、登記申請に必要な地積測量図などの図面や書類を作成します。
地積測量図について詳しく知りたい方はこちらの記事「地積測量図とは何?なぜ自分の土地の図面がないのか理由を説明します」をご覧ください。
4.登記申請業務
法務局に出向き登記申請を行う業務。
現在ではオンライン申請や郵送による申請なども可能ですが、基本的に法務局の申請窓口に直接申請します。
報酬額は2003年8月1日より自由化
今までは土地家屋調査士の報酬額を法務大臣が定めていたため、どこの土地家屋調査士に依頼しても一律でした。
ところが、2003年8月1日より自由化されたことにより、土地家屋調査士自身が自由に値付けできるようになったのです。
依頼者としては登記にどのくらいの費用がかかるかは気になるところ。
そこで、自由化後の登記費用の相場をご紹介します。
価格は実費と報酬を含めたコミコミの値段です。
土地建物の登記費用の相場
まずはこちらの表をご覧ください。
これは日調連(日本土地家屋調査士会連合会)が2016年のアンケートをもとに公表した土地や建物などの登記費用の相場です。
そして、このデータをもとに同じく日調連が事例を交えて詳しく記載した冊子があります。
非常に詳しく載っているのですが、用語等、正直一般人には難しくてイマイチ理解できないのも事実。
そこで、この資料を引用させていただき、記載されている事例を詳しく解説します。
土地に関する登記費用相場
まずは、土地に関する登記について。
つぎのような各事例の登記費用相場をみていきます。
- 土地地目変更登記
- 土地合筆登記
- 土地分筆登記(地積測量図あり)
- 土地分筆登記(地積測量図なし)
- 地積更正登記&分筆登記
土地地目変更登記
土地地目変更登記とは土地の種類(=地目)を変更する登記。
地目は例えばこういうものがあります。
- 宅地
- 雑種地
- 公衆用道路
- 畑
- 山林など
今回のケースは雑種地から宅地に地目変更する登記。
相場はズバリ「約44,000円」。
土地地目変更登記の場合、測量も図面作成も必要ないため、申請書類のみを作成します。
そのため、この値段。
土地合筆登記
合筆登記とは複数の土地を1筆(1つ)に合体する登記。
今回のケースでは個人所有の2筆の土地(宅地)を合筆するというもの。
この場合、相場は「約47,000円」
合筆登記の場合も測量の必要はなく、地積測量図は必要ありません。
ただし、「地目」が違うなどの場合は合筆制限に引っかかるため、そのままでは合筆登記ができません。
こうなると、地目変更登記を先にしなければいけなくなり費用もその分かさみます。
次に土地を分割する分筆登記の場合を3種類のケースでみていきます。
土地分筆登記(地積測量図あり)
まずは、平成17年の地積測量図が存在する土地。
この場合登記費用相場は「約240,000円」。
ポイントとなるのは以下
- 2筆に分筆
- 当該地は平成17年の地積測量図が法務局にある
- 地積測量図記載の境界標識が全て存在
- 測量の結果誤差は許容範囲
このケースは最も簡単な分筆です。
状況からみて、既に隣接地との立会は終わっており、境界標識が埋設され、それをもとに作成された地積測量図が法務局に納められている。
この場合、現地で境界標識が動いていないかを測量し、誤差が許容範囲であれば、後は分筆用の地積測量図を新たに作成するだけで分筆登記ができます。
そのため、分筆登記の中では比較的安い「約240,000円」という結果になりました。
古い地積測量図はそのままでは分筆できません
ただし、地積測量図といってもあまりにも古いものだとNGです。
例え、存在していても再度境界確認作業が必要になり、次のケースと同じ「地積測量図なし」と同じような作業が必要になります。
平成17年3月7日以降というのが一つのポイントになります。
詳しくは「地積測量図の歴史」について書いた記事をご覧ください。
土地分筆登記(地積測量図なし)
つぎは、市道と国道の角地にあり、境界が1つも決まっていない土地を分筆する場合。
もちろん地積測量図もなし。
この場合、相場は「約481,000円」でした。
ちょっと安いような気もしますが。
今回のケースでポイントとなるのは以下
- 2筆に分筆
- 南側市道と東側国道に隣接
- 隣接する土地や道路と境界は1つも決まっていない
- 謄本の地積との誤差は許容範囲内
分筆をするには隣接する全ての境界が決まっている必要があるため、全ての隣接地と境界確認が必要になります。
この場合だと、3つの民々境界と2つの官民境界(道路の境界)です。
登記申請までの流れとしては次のようになります。
- 測量
- 現地立会
- 境界確認書類にお互い署名捺印
- 地積測量図の作成
- 分筆登記申請
官民境界が国道と市道で2つあるため、期間は最低でも3ヶ月以上はかかる大掛かりな事例です。
官民境界については「道路の境界」について解説した記事をご覧ください。
また、今回のケースはブロック塀があるため、それらを参考に面積を割り出していきます。
割り出した面積が登記簿謄本と誤差許容範囲内であればそのまま分筆をかけます。
地積更正登記&分筆登記
つぎは、誤差が許容範囲を越えた場合。
この場合が最も費用のかかる登記です。
結論として相場は「約727,000円」です。
なぜこんなに高いかと言うと、地積更正登記をしてからでないと分筆登記ができないため。
今回のポイントは以下
- 6筆に分筆
- 東側市道と北側国道に隣接
- 隣接する土地や道路と境界は1つも決まっていない
- 謄本の地積との誤差が許容範囲を超える
分筆登記自体は先程のケースとあまり変わりありません。
ところが、今回のケースは誤差が許容範囲を超えているため、分筆登記以外に地積更正登記も必要になるのです。
公差の許容範囲は?
この実際の面積と謄本に書かれた面積との誤差のことを「公差」といいます。
公差が規定許容範囲を超える場合は、土地の面積を訂正する登記(=地積更正登記)を行ってからでないと分筆登記ができない決まりがあります。(不動産登記事務取扱手続準則の第72条第1項)
公差の許容範囲は地目によって変わります。
例えば、登記簿謄本上の面積が100.00㎡の場合、公差許容範囲は次のようになります。
- 宅地:約±0.81㎡
- 山林:約±9.42㎡
これより小さかかったり、大きかったりする場合、分筆登記前に地積更正登記が必要になります。
建物に関する登記費用相場
次に以下のような建物の登記費用をチェックしていきます。
- 建物表題登記(新築一戸建て)
- 建物表題登記(マンション1棟)
- 建物滅失登記
順番に解説します。
建物表題登記(新築一戸建て)
一般的な新築一戸建ての建物表題登記をする場合。
建物表題登記費用相場は「約82,000円」。
土地家屋調査士の作業手順は主に以下
- 現地調査
- 建物図面の作成
- 登記申請
現地調査では、実際の建物が建築確認申請の図面(平面図等)通りに建築されているかをチェックします。
あくまで、チェックですので一戸建ての規模であれば測量器械を使わず、巻き尺(=テープ)を使って寸法の確認をします。
その後、平面図や配置図をもとに建物図面を作成し、建物表題登記申請をします。
建物表題登記(マンション1棟)
8階建てのマンション1棟です。
この場合、建物表題登記費用相場は「約173,000円」でした。
今回は、マンションまるまる1棟を同じ所有者が所有する場合です。
一方、分譲マンションなど「区分所有」で登記する場合は各戸数でそれぞれ登記するため、もちろん費用は大きく異なることに注意。
建物滅失登記
建物を壊した際に登記簿上から消す登記を建物滅失登記と言います。
この場合の登記相場は「約46,000円」でした。
土地家屋調査士の作業手順としては、
- 現地で建物が「存在しない」という証拠写真を撮影
- 申請書類を揃えて登記申請
現地で写真を撮るだけですので、費用も安め。
ただ、注意しなければいけないのは、これから解体予定や解体中の場合は登記が通りません。
法務局はあくまで現況主義ですので、既に更地になっている場合や建物が存在していない場合でないと登記してくれません。
土地や建物の登記費用の相場:まとめ
今回は、不動産の登記費用の相場を解説しました。
まとめると以下になります。
- 土地地目変更登記:約44,000円
- 土地合筆登記:約47,000円
- 土地分筆登記(地積測量図あり):約240,000円
- 土地分筆登記(地積測量図なし):約481,000円
- 地積更正登記&分筆登記:約727,000円
- 建物表題登記(新築一戸建て):約82,000円
- 建物表題登記(マンション1棟):約173,000円
- 建物滅失登記:約46,000円
測量や登記費用は決して、安いものではありません。
ただ、正しい相場観を身につけることで、不動産の売買時にどのくらいの費用がかかるのかシュミレーションもしやすくなります。
参考リンク:日本土地家屋調査士会連合会 業務報酬統計資料